今回は、資金繰りが非常に厳しい企業との事業再生ミーティングでした。

金融機関への返済条件を変更し、いわゆるリスケジュールを行っている状況です。

こうした企業では、

「今期は黒字になりそうか」

「月商はいくら必要か」

という月次・年次の議論だけでは不十分です。

資金が尽きるまでの時間が限られているからです。

だからこそ事業再生では、

経営を月単位から、日単位へ落とす。

ことが重要になります。

今回のミーティングでも、

日次決算の徹底

からスタートしました。


事業再生で最初に確認すべきことは何か

資金繰りが厳しい会社では、まず現状を数字で正確に把握する必要があります。

見るべきものは、大きく3つです。

損益。

キャッシュフロー。

手元資金。

この3つは似ているようで違います。

利益が出ていても、借入返済などによって現金が減っている場合があります。

反対に、赤字であっても一時的には現金が残っていることもあります。

したがって、

損益分岐点だけでは、事業再生には足りません。


「損益分岐点」と「キャッシュフロー分岐点」を分けて考える

まず明確にするのが、

損益分岐点売上高

です。

つまり、

「いくら売れば赤字ではなくなるのか」

というラインです。

しかし、再生局面ではもう一つ必要です。

私はこれを実務上、

キャッシュフロー分岐点

として考えます。

これは一般的な会計用語として統一された概念ではありませんが、実務では非常に重要です。

例えば、

営業上の固定費。

税金・社会保険。

借入金返済。

設備支払い。

その他のキャッシュアウト。

まで含め、

「いくら売上をつくれば、現金が減らなくなるのか」

を見る考え方です。

損益では黒字なのに、キャッシュが減り続ける。

事業再生では、この状態を放置できません。


「月1,000万円必要」では行動につながらない

ここからさらに分解します。

例えば、

今月必要な売上高が1,200万円。

現在の見込みが900万円。

差額が300万円だったとします。

営業日数が15日残っているなら、

必要なのは、

300万円 ÷ 15日=1日20万円

です。

すると、

「今月あと300万円足りません」

という漠然とした話から、

「今日から毎日20万円を追加でつくる必要がある」

という具体的な経営課題に変わります。

ここまで落とすことが重要です。


日次決算は「結果を見る」ためではない

日次決算というと、

毎日売上や利益を集計することだと思われがちです。

しかし、事業再生における日次決算の目的は、

昨日の数字を見ることではありません。

昨日の結果から、

今日の行動を変えること

です。

例えば、

昨日の売上目標20万円。

実績12万円。

8万円不足。

ならば、

今日、

何件電話するのか。

何件訪問するのか。

どの見積案件をクロージングするのか。

既存顧客へ何を提案するのか。

どの入金を前倒しできるのか。

まで落とします。

数字と行動がつながって初めて、

日次決算は経営管理になります。


売上だけではなく「粗利」を見る

ここでも注意が必要です。

資金繰りが苦しいからといって、

何でも売ればいいわけではありません。

売上100万円でも、粗利益10万円の仕事。

売上30万円でも、粗利益20万円の仕事。

会社を再生するうえでは、後者の方が有効な場合があります。

だから、

「1日いくら売るか」

だけではなく、

「1日いくら粗利益をつくる必要があるか」

まで考えます。

事業再生では、

売上至上主義から、

粗利・キャッシュ重視の経営

へ変える必要があります。


売上を増やすだけでは再生できない

もう一方で徹底して見るのが、

費用です。

資金が厳しい会社に、

「売上を頑張りましょう」

だけでは足りません。

同時に、

すべての支出を一度疑います。

必要な費用なのか。

今払う必要があるのか。

金額を下げられないか。

契約を変更できないか。

遊休資産を売却できないか。

在庫を現金化できないか。

回収条件を短縮できないか。

支払条件を見直せないか。

不採算事業を止めるべきではないか。

できることは、すべてやる。

事業再生では、この覚悟が必要です。


ただし「費用削減だけ」でも会社は再生しない

ここが非常に重要です。

コストカットには限界があります。

100万円の経費を0円以下にすることはできません。

一方、売上や粗利益には上限がありません。

だから事業再生では、

守りと攻めを同時に行います。

不要な費用を切る。

キャッシュアウトを抑える。

同時に、

粗利の高い商品へ集中する。

既存顧客へ追加提案する。

休眠顧客を掘り起こす。

受注確率の高い案件へ営業資源を集中する。

経営資源を、

「最も早くキャッシュを生む場所」

へ移します。


「13週間の資金繰り」まで見える化する

日次管理だけでは、目の前しか見えなくなる危険もあります。

そこで私は、

日次の資金繰りと、約13週間先までの資金予測

を併せて見ることを重要視します。

今日。

今週。

今月。

3か月後。

この4つの時間軸を同時に見る。

そうすると、

給与。

社会保険。

税金。

仕入。

外注費。

借入返済。

賞与。

大口支払い。

などによる資金の谷が見えてきます。

問題が起きる前に、

金融機関や取引先との相談もできます。


リスケは「ゴール」ではなく、再生のために買った時間

返済条件を変更すると、当面の資金繰りは改善します。

しかし、

リスケしたから会社が再生したわけではありません。

むしろ、

「再生するための時間を金融機関からもらった」

と考えるべきです。

その時間の中で、

収益構造を改善する。

粗利益を増やす。

固定費を適正化する。

資金繰りを正常化する。

そして、

自力で返済できる会社へ戻す。

ここまでいって初めて事業再生です。


戦略CFOの仕事は「資金をつなぐこと」だけではない

資金繰りが厳しくなると、

「どこから借りるか」

という話になりがちです。

もちろん、資金調達は重要です。

しかし、

赤字構造のまま新しい資金を入れても、

穴の空いたバケツに水を入れているだけになってしまいます。

だから戦略CFOとして考えるのは、

なぜキャッシュが減っているのか。

いくら売れば止血できるのか。

どの事業を残すのか。

何をやめるのか。

どこに経営資源を集中するのか。

そこまでです。


事業再生とは「数字を行動に変えること」

今回のミーティングでも、

大きな年間計画だけをつくるのではなく、

最終的には、

「明日から何をするのか」

まで落としていきます。

月にあといくら必要なのか。

1日にいくら粗利が必要なのか。

誰が売るのか。

何を売るのか。

どの顧客へ行くのか。

何を削減するのか。

誰がいつ実行するのか。

ここまで具体化する。

事業再生とは、

壮大な戦略を描くことではありません。

数字を、今日の行動に変えること。

そして、

その小さな改善を毎日積み重ねることです。

「再生は月次では起こらない。今日一日の経営の積み重ねで起こる。」

厳しい局面だからこそ、

数字から逃げない。

現実から逃げない。

できることを、一つずつやる。

そして、会社の未来をもう一度つくっていく。

これからも実際の経営現場から学びながら、企業再生と戦略財務について考えていきたいと思います。

一緒に学びましょう。