YahooとLINEの経営統合はプラットフォーム戦略を考える上で重要。
このケースを3つの論点でまとめている
1、統合に至った背景と相互補完関係
2、GAFAやBATH に次ぐ第3極形勢の可能性
3、統合がもたらす顧客提供価値
「競合とも言える企業同士の統合」である。
背景には強烈な危機感とそれを克服しうる補完要素があったはずだ。
それは何か!果たして統合によって想定通りの成果が得られるのかこれが第一の論点である。
次の論点は第三極のプラットフォーマーとなれるから Microsoft やGAFAに代表される米国系のグローバル企業群が第一極。
強大な国内市場をテコに成長著しい BATHと呼ばれる中国企業群が第二極。
しかしこうした大きなくくりで議論することに落とし穴はないか。
最後の論点はつまるところこの統合がユーザーにもたらす新たな価値とは何かということだ。
Yahoo は間違いなくインターネット上のサービスを切り開いてきたリーダー企業である。
その成功要因は「パソコンという場」の中にあるという「1丁目1番地」を確保したことであろう。
検索ニュースメールにショッピング。すべてヤフーのトップページで済んでしまう。
他社の参入を阻止しユーザーを増やし広告収入を増やすという好循環を実現してきた。
それぞれのサービスの充実もあるがまずは鮮烈で「良い立地」を確保できた。
ところがこの10年でプラットフォームに地殻変動が起きた。
端末の主役がパソコンからスマートフォンに移行しつつある。
ゲームなどもそうだったようにパソコンで成功した企業は携帯電話への移行に乗り遅れる。
携帯電話で成功した企業もスマホへの移行に適用できない。
特にスマホはトップページという概念がなくサービスごとにアプリを開く仕様だった。
ニュースを見なければニュースのアプリを、ショッピングをしたければショッピングのアプリを開く。
このプラットフォームを構築したのは米アップルの iPhone だ。
そして国内スマホの世界で一丁目一番町を確保のは LINE のメッセージアプリであった。
19年に急拡大したスマホ決済というプラットフォームでは激突するのだろうそう思っていたら突然の発表だ。
競合という関係では一転してそれも提携を越えて一気に経営統合を発表したのだから驚かないわけにはいかない。
まずヤフーにとって LINE の魅力は何か。
上述したように一丁目一番地である Message アプリとそのユーザーだろ。
もう一つは日系のインターネットサービス事業者として台湾やタイなど海外展開で成功している点だ。
LINE側の事情はどうか。
メッセージアプリというプラットフォームに急激に様々なサービスを加えている。
しかしサービスといってもあくまでも他社との提携であって自前で新たなプラットフォームを構築しているわけではない。
その中でスマホ決済サービスは自社で用いるプラットフォームである。
まさにその局面で弱点が出た。「資金力と営業力」だ。
20社以上が参入したスマホ決済市場ではキャッシュレス還元競争が有効なうちに一気にシェアを取らんとして手数料を無料にするなど体力勝負の様相を示してきている。
資金力営業力ではヤフーに軍配が上がる。
気づけば街のあちこちに 「paypay 使えます」という表示が溢れ QR コードはレジ横などいたるところで目に付く 。
LINE Pay が使える店は少ない。
PayPayが急激に加盟店を獲得できたのはソフトバンクグループの営業力にある。
わずか半年で1,000人もの営業員をこっそりと集めたのが Yahoo の強みは、実は地道な営業力にある。
第2の論点はプラットフォーマーの覇権争いだ。
この議論をする上で大切なのがプラットホーム構造の理解である。
プラットフォームが3次元のレイアウトをしている。
例えばインテルはパソコンの CPU という部品レイヤーをされているスマホの CPU では 英ARMがダントツのリーダーだ。
Yahoo はとLINE がターゲットとしている決済プラットフォームは、
アプリケーションのレイヤだ。一言でプラットフォームと言っても部品レイヤーとアプリケーションレイヤーは全く違う。
Apple が主戦場としているのは端末レイヤー。
そこを足がかりに Apple Store というアプリケーションレイヤーに進出している Amazon . com はサービスレーヤーが中心だが
その後スピーカーの Amazon Echo で端末レイヤーに進出している。
プラットホームの議論ではレイヤー間競争とレイヤー内競争の両方を立体的に理解する必要がある。
アプリケーションレイヤーでの優位も別のレイヤーの主役が交代すると一気に崩れてしまう。冒頭に述べたヤフーの事例はまさにその典型である。
GAFAはそこを理解して様々なレイヤーで覇権の布石を打っている。単純な第1極、第2極というくくりでは押さえるべきポイントを見失うことになる。
最後に Yahoo と LINE の統合はユーザーに新たに提供する価値の問題がある。
営業力や資金力は企業側の都合であって消費者にとってはどんなメリットが生じるかがすべてだ。
ほとんどのユーザーにとってこの統合発表が?と感じられたのはそこが不明確だからであろう。
GAFAの特徴が必要なレイヤーをこっそりと吸収し潜行しサプライズ的に価値を提供するという秘密主義にある。
2社は果たして密かに異なるレイヤーのサービスを準備しているのか。
今回の統合でサプライズをユーザーにもたらしてくれるのか期待半分不安半分である。