有名企業のファイナンスを学ぶ「戦略ファイナンスメルマガ第2号」


【ソフトバンクのファイナンス Day2】
Day2は、90%の利益率の源泉を徹底解析していきます。

戦略CFO大学※1で活用する財務フレームワーク「ニュー資金別貸借対照表」で
ソフトバンクグループを分解していきます。

まず、現預金は5.2兆円保有しているが、この5.2兆円はどこから生み出しているのか?
ニュー資金別貸借対照表※2のフレームワークに則り分析していきたい。
ニュー資金別貸借対照表は、B/SとP/LとCFを1枚のシートで可視化し、
どこからお金が生まれてどこに使われているかが一目瞭然になり、
企業の資金ベースでの強み弱みがわかる。
キャッシュフロー計算書(CF)は、フローという名の通り1会計年度のキャッシュフローはわかるが、
ストックであるB/Sにどうキャッシュが使われているかが見えてこない為、
B/S、P/L、CFを1枚にした資金別貸借対照表は財務・ファイナンスの革命的なフレームワークと言える。


では、ニュー資金別貸借対照表をもとに見ていきます。

【事業・非事業の儲ける力】
事業の利益の蓄積である損益資金は、14兆円。
22年3月期が第42期ということは、42年で14兆円を積み上げた企業構造は注目すべき点と言える。

【サイト】
営業債権(売掛金など)と営業債務(買掛金)は3,900億円キャッシュアウト(サイト負け)の状態であるが、
回転期間は、営業債権4.55か月に対し、営業債務7.99か月。
シンプルにいうと請求・回収は4.5か月に対し、支払いは8か月後で営業債権・営業債務の残高ベースでいうと、
経常運転資金は、マイナスと運転資金不要の決済取引条件をつくっている。

営業債権4.55ー営業債務7.99=△3.44 売上が上がれば上がるほどキャッシュフローは良くなるという構造。

【棚卸資産(在庫)】
1,428億円なので、売上の2.3%程度
サイトと棚卸の回転期間、つまりCCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)は、

売上債権回転期間+棚卸資産回転期間ー支払債務回転期間=4.55+0.58ー7.99=△2.86

Amazon△0.93、Apple△2.46

【資本金】
2,380億円

事業の儲け14兆ーサイト0.39兆ー棚卸0.14兆+資本金0.23兆=13.7兆円
この13.7兆円を生み出す源泉が、固定資産にある「投資」
まさに、21年3月期の利益率90%の源泉は、投資等の24兆円である。
投資等が、投資損益を生み出し、再投資の拡大による「金の卵を産むガチョウ」を増やし、キャッシュを生み出している。

ここで、24兆の投資に対し、持分資金は13兆という事は、不足しています。
それをカバーしているのは、19兆円の有利子負債である。
財務レバレッジ(てこの原理)は、21年度382%、22年度406%とレバレッジを働かせている。
高い利益率(90%)でレバレッジを効かせるとキャッシュを生み出す力は最大化する。

【安定資金】
長期的に事業に投資できる資金である安定資金は、4.9兆円保有している。
実に現預金の94.8%が安定度の高い資金で構成されている。

【投資損益の赤字が続いたら?】
22年度1.46兆円の赤字が4年継続したら、計算上、3.5年で資金は枯渇する。
(現預金5.1÷損失1.46)
しかし、24兆もの投資があり、設備や建物と違い、流動性は高いのでキャッシュにすることも可能である。
では、有利子負債21兆円は多すぎないのか?という点では、21年度の5兆円の利益で考えると4年で完済出来る。
18~20年度は、デコボコはあるが、8,000億円の損失から1.5兆の黒字であり、返済力には大きな問題はないように感じる。

そこで、投資先の厳選や、孫さんが言うNAV(ネット・アセット・バリュー)と
LTV(ローン トゥー バリュー 純負債/保有株式)の方針が重要になる。
社内の決まりで、LTVは、通常時25%未満、異常時上限35%と定められているとの事。


次回、Day3は、投資戦略を読み解く。投資先の厳選と保有割合は?核心に迫ります。


※1 戦略CFO大学
戦略CFO®とは、経営者の参謀として
戦略面・ファイナンス面から経営者が根拠ある経営判断を行えるようサポートし、
成長戦略のデザイン・企業価値向上を支援するコンサルタントのオンラインスクール
https://map-innovation1.com/strategycfo/

※2 ニュー資金別貸借対照表
故佐藤幸利税理士が、企業財務の真実を明らかにする資金会計理論を構築し、
研究を重ね最新版の財務分析手法