ドルペッグ制の香港。
香港の通貨制度が急に変わり、国際金融市場に影響がおよぶリスクも意識
香港は同額の米ドルの準備に見合った額までしか発行できないカレンシーボード制というドルペッグ制(連動)を採用している。
1ドル=7.75~7.85香港ドルの「取引バンド」を設定し、上限か下限に達すると香港金融管理局が為替介入する仕組み。
6月末施行された「香港国家安全維持法」が主要先進国の反発する中、香港ドルは安定している。
2日、1米ドル=7.75香港ドル近辺と上限に張り付く。市場では通貨制度が急に変わり、国際金融市場に影響がおよぶリスクも意識され始めている。
上限に張り付いた状態は約1か月続く。背景には、香港金融管理局がたびたび香港ドルの売り介入を実施している。
【一国二制度が揺らぐなかで米ドルへのペッグ制が維持は可能か?】
一国二制度が揺らぐ中、米ドルペッグ制が維持できなくなるのではないかという懸念は根強く残る。
香港ドルと米ドルを1年後に受け渡しする「フォワードレート」。このところ香港ドル安方向で動いている。
【シンガポール 非居住者預金前年同月比4割増】
「香港からドルやユーロ建ての資金が流出している可能性がある」という。
シンガポール金融通貨庁による非居住者の預金は5月、前年同月比4割増。
1983年から採用された香港ドルが米ドルとのペッグ。
香港ドル売りを投機筋が仕掛けてきたが、香港の外貨準備で対応してきた。
外貨準備金は約4400億ドル(約47兆円)と世界第9位の準備高。
「マネタリーベースの2倍以上の外貨準備」
【政治によりペッグ制が崩れるリスク】
「香港の通貨制度が今後の米中対立の論点になり得る」
現地の為替ディーラーは「現行のカレンシーボード制の修正や、人民元とのペッグが取り沙汰されており、いずれ変わる時が来るかもしれない」と話す。
香港が米ドルとのペッグ制を放棄すれば、外貨準備として持つ米国債を市場で大量に売却することも考えられ、そうなると米国の長期金利が急騰しかねない。
橋本龍太郎元首相が「米国債を売却したいという誘惑に駆られたことが幾度かある」と述べ、米国株が急落した。
香港ドルの急変が2020年後半のテールリスク(確率は低いが起きれば影響が大きいリスク)の1つとしてくすぶる。